景品表示法とは?はじめに
本ページでは、企業法務に強い弁護士が、景品表示法の概要や、違反時のリスク、2024年改正予定の新法について解説していきます。
景品表示法という法律名を聞いたことのある経営者の方は多いのではないでしょうか。
ニュースなどで、景品表示法違反、優良誤認、等のワードを度々耳にするようになりました。
景品表示法は、一般消費者向けに事業を展開している全ての事業者に関係してくる法律です。
製造・飲食・運送など、あらゆる業態で景表法と関係することとなります。
では、実際にはどのような法律で、事業者はどういった点に注意するべきなのでしょうか。
また、景表法は2023年に改正されており、新景表法は、2024年から施行予定となっています。
従前と比べてどのように変わったのか、という点も併せて解説していきます。
以下では、
・そもそも景品表示法とはどういった法律なのか
・景表法に違反するリスク
・景品表示法の社内整備義務やこれを実施しないリスク
・弁護士に相談するべき理由とは
といった点について記載していますので、消費者向けの事業を営む経営者の方々はぜひご一読ください。
景品表示法とは?
景品表示法は、正式名称を、不当景品類及び不当表示防止法といいます。
景品表示法、または景表法などと省略されることが多いです。
本ページでも、以下、「景表法」といいます。
景表法は、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことなどを厳しく規制することで、消費者を保護することを目的としている法律です。
参照リンク:消費者庁 景品表示法のページ
景表法は、大きく分けて二つのことを規制しています。
一つが、“不当表示の禁止”というものです。
これは、チラシ、ポスターや看板などと言った商品の広告・説明全般にかかってくる規制です。
その媒体も限定されているものではなく、ウェブサイトや、パンフレットに至るまで、商品の説明がされているもの全般について関係してきます。
ニュースなどで話題になりやすいのはこちらの規制だといえます。
この中では、大きく次の3つについて規制が設けられています。
①優良誤認表示の禁止(景表法第5条1号)
商品やサービスの品質や規格について、実際の商品よりも良く見せかけるような表示を、優良誤認、といいます。
実際よりも良い商品であると誤解させてしまうような表示は禁止されています。
例えば、実際の違反事例あったものとして、
・本当は、少量しかブランド米を使用していないのに、ブランド米のみを使用しているかのような表示をする
・実際にはダイエット効果を裏付ける根拠がないのに、ダイエット効果があるなどと標ぼうしている
・撥水加工という記載があるのに撥水加工がされていない
・天然鉱石ラジウム温泉と記載しているのに、水道水などを加温した水を使っていた
といった事実とは異なる内容を表示しているものが挙げられます。
景品表示法における違反事例集 消費者庁表示対策課平成28年より
また、本当は他の企業と同レベルの技術や加工方法を使っているのに、自社だけが特別優良であるかのような説明も禁止されています。
例えば、ありふれた製造方法なのに、「日本で唯一当社独自の製造方法」などといった表示をすることなどです。
これに違反したときの罰則については後ほど解説します。
②有利誤認表示の禁止(第5条第2号)
これは、価格や取引条件に関する不当表示を禁止する規定です。
簡単に言うと、「お得だ!」と消費者に思わせてしまうが、実際はそこまでお得でもないような表示のことを言います。
例えば、
・スーツ全品半額という記載があるのに、ある程度以上の金額のスーツのみ半額で販売していた
・「当社通常販売価格と比べて特別謝恩価格・限定価格」などと表示されているのに、今まで通常販売価格で売っていた実績がない
・毎月先着5名は1万円ポッキリと表示していたのに実際には1万円以上の出費が必要なサービスの提供をしていた
といったものです。
他にも、①と同様、自社だけが特別優れているようなサービス提供をしていると思わせる表示も禁止されています。
例えば、
・地域最安値、と表示があるが合理的根拠がない
・この保証は当社だけ、と記載があるが他社も同様のサービスを行っていた
などです。
③その他、誤認される恐れがある表示の禁止
最後に、上の①②に該当しなくても、特に注意が必要であると認められた広告手法・表示方法については特別に指定が設けられています。
例えば、
無果汁の清涼飲料水等についての表示
不動産のおとり広告に関する表示
有料老人ホームに関する不当な表示
などです。
いわゆるステルスマーケティング規制、ステマ規制もこれに該当します。
ステルスマーケティングとは、実際には企業の広告活動なのに、一見すると個人の感想や口コミだと誤解してしまうような広告方法のことを言います。
2023年の10月より、こういった広告は制限されており、景品表示法違反となります。
詳しくは、ステマ規制について解説したページをご覧ください。
▼関連記事はこちらから▼
【2023年10月施行】ステマ規制について!導入された理由や、ステマ規制の対象について弁護士が解説!
以上の①~③が“不当表示の禁止”にあたります。
景表法によって規制がある二つめは、“景品類の制限及び禁止”というものです。
これは、クジや懸賞キャンペーンを行う際に、どの程度の商品価格までなら許されるのか、どういった形態の懸賞は許されないのか、などという点について規制を定めたものです。
そのため、こちらは、企業が懸賞やプレゼントキャンペーンを行う際に注意するべき規制であると言えます。
本ページでは、企業が通常の営業活動をする際にも問題となる、“不当表示の禁止”に関して解説を行っていきます。
景品表示法についてよくある相談事例
よくある相談は、やはり景品の表示方法に関するものです。
景表法によって、景品の価値を明確に表記する必要があるのですが、その表示の仕方について、どの程度であれば許されるのか、どこからがアウトなのか、という部分は曖昧であり、悩ましい部分です。
また、広告表現に関する相談に関しても同様です。
特に、誇大広告や虚偽広告に該当するかどうか、消費者を誤解させる表現が含まれていないか、について、法律的な知識が無ければ分かりにくいものとなっているのです。
景表法は、悪意を持って偽造するつもりがなくても、商品の良さを消費者に知ってもらいたいと意気込むうちに、うっかり違反してしまうこともある法律です。
最大限の宣伝をしたいと思って書いた文章や煽り文句が、実際の事実と離れてしまうと、景表法違反になってきてしまいます。
しかし、うっかりでも景表法に違反してしまうと、大きな制裁が下されてしまう法律です。
具体的には、消費者庁からの事情聴取ののちに、措置命令が出されてしまいます。
措置命令が出された際のリスクについては、下記で解説していきます。
景品表示法に違反してしまった際のリスクとは?
上では、景表法が禁止している、①優良誤認②有利誤認③その他不当表示について述べてきました。これらの規定に違反すると措置命令が出されることとなります。
措置命令とは、不当表示などをしている事業者に対して、そうした表示をやめたり、商品の提供自体をやめたりするような命令のことを言います。
措置命令が出されてしまうと、消費者庁や都道府県のホームページで、社名と共にその違反内容が公開されてしまいます。
違反内容がウェブ上で閲覧できることとなってしまうのです。
実際に、消費者庁の景品表示法関連報道発表資料のサイトなどをみるとイメージしやすいかと思います。
こういったところに社名が載ってしまうと、新聞・ニュース報道などもなされてしまいます。
顧客や取引先に知られてしまい、事業に対するダメージを負うことになりかねません。
更に、不当な表示によって利益を事業者が持っているのはおかしい、という考えから、課徴金納付命令(金銭を納付しなければならないという命令)の対象となることもあります。
また、2024年からの改正法では、罰則規定が新設されました(第48条)。
これにより優良誤認・有利誤認表示をした場合には、100万以下の罰金刑という刑事罰に処されることもあります。
法人の両罰規定も新設されています(第49条)。
そして、新法では、一定の場合に、適格消費者団体が、事業者に対し、表示の裏付けの合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるようにもなりました(第35条)。これに対して、事業者は一定の場合を除き、要請に応ずる努力義務を負うこととなります。
2024年からの改正により、事業者に対する制裁はより重いものとなったといえるのです。
景表法の社内整備義務とこれを実施しないリスクとは?
景表法では、第26条で、「表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置」を取ることを事業者に対して義務付けています。
具体的な内容については、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」にまとめられています。
その中で、「必要な措置」に関して、以下のように記載されています。
“例えば、景品類の提供について、それが違法とならないかどうかを判断する上で必要な事項を確認することや、・・・(中略)・・・確認した事項を適正に管理するための措置を講じることである。”
そして、以下の7項目の実施を求めています。
1 景品表示法の考え方の周知・啓発
2 法令遵守の方針等の明確化
3 表示等に関する情報の確認
4 表示等に関する情報の共有
5 表示等を管理するための担当者等を定めること
6 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
7 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
これらの取り組みについて、具体例も挙げられています。
例えば、
・関係従業員等に対し、景品表示法に関して一定の知識等を獲得することができるよう
構成した社内の教育・研修等を行うこと。
・パンフレット、ウェブサイト、メールマガジン等の広報資料等に法令遵守に係る事業
者の方針を記載すること。
・無作為に抽出したサンプルの成分検査を実施すること。
・ 企画・設計・調達・生産・製造・加工・営業の各部門の間で表示しようとする内
容と実際の商品・役務とを照合すること。
・表示等の根拠となる情報を記録し、保存しておくこと。
などです。
景品表示法に関して弁護士に相談するべき理由
景品表示法は、違反した際のリスクが大きなものといえますが、法律の専門的知識が無ければ、違反しているかどうかを見極めるのは難しいものだといえます。
景表法自体には抽象的な記載がなされており、実際の違反事例の蓄積などをみて、違反しているか否かを見極める必要があるためです。
また、事業者側が、表示の根拠となっていると思っていても、法的には根拠であるには足りないと言った事例も考えられます。
こういった際に、リーガルチェックを通さずにいると、うっかり違反することになりかねません。
この点、弁護士であれば、宣伝手法だけでなく、同時に内部の整備義務についてもアドバイスを行うことが可能です。
弁護士は、法的専門知識と経験を活かし、信頼性の高い広告活動を展開できるようサポートすることができるためです。
法律の専門家である弁護士によるチェックを通すことで、違反リスクをさげ、適切な広告を実施することにつながるのです。
消費者を対象とする事業を営んでいる方々は、ぜひ一度弁護士の活用を検討して頂ければと思います。
景品表示法については弁護士にご相談ください
景品表示法に違反してしまうと、措置命令や、刑事罰の対象となることがありえます。
企業としては、そういった罰則を避け、レピュテーションリスクを下げるためにも景表法に従った広告/表示を行うことが肝要です。
弁護士法人ニライ総合法律事務所の弁護士は、企業法務を数多く取り扱っており、顧問先の事業も多岐にわたります。
様々な業界の事業者の方々にとって、適切なアドバイスを提供できると自負しておりますので、お悩みの方はぜひ専門家のサポートを活用してください。
お気軽にご連絡いただければと思います。
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Last Updated on 2024年4月15日 by roudou-okinawa
この記事の執筆者 弁護士法人ニライ総合法律事務所は、実績豊富な6名の弁護士で構成されています。このうち3名は東京で弁護士活動してきた経験を持ち、1名は国家公務員として全国で経験を積んできました。 当事務所の弁護士は、いずれも「依頼者の最大の利益を追求する」をモットーに行動いたします。 |