point 1 期限の利益喪失約款を入れる
(1)債権回収の実行性を高めるためには必ず契約書に期限の利益喪失約款を入れます。
期限の利益喪失約款は、相手方の経済状況が悪化したときに直ちに残債務を回収できるようにする条項です。
実は当事者同士の契約で、これを入れていないために、債権回収がいつまでもできないという事が往々にしてあります。
民法137条には、債務者が一定の状態になったときに、債権者が債務者の期限の到来を主張することができるとしています。
第137条(期限の利益の喪失)
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
(1)債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
(2)債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
(3)債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき
この条文は、所定の要件が備われば、当然に債務者の期限の利益喪失の効果が生じるというものではなく、債務者に対する意思表示により期限の利益を失わせることになる形成権だと解されています。
当事者同士の契約においては、この民法の条項をより強力にした期限の利益喪失約款を入れる事が、確実な債権回収において、必要です。
ただし、期限の利益喪失事由が不明瞭であったり、著しく債務者にとって不利益な条項については無効になる可能性があります。
point 2 期限の利益喪失約款のひな型
第●条 (期限の利益喪失)
乙に以下の各号に規定する事情が生じた場合には、乙の甲に対する本契約上の債務については、甲の催告なしに当然に期限の利益を失い、乙は直ちに、残債務全額を一括して弁済しなければならない。
① 乙が個別契約に基づく本件商品の代金の支払いを一度でも遅滞した場合
② 乙が振り出し、引き受け、又は裏書した約束手形・為替手形小切手が不渡りになったとき
③ 乙に対して、競売、差押え、仮差押え、又は仮処分の申立てがなされたとき
④ 監督官庁から、乙が事業停止又は事業免許もしくは事業登録の取り消し処分を受けた時
⑤ 破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始申立てもしくは特別清算開始の申立てがあったとき
⑥ 資本減少、事業の廃止もしくは変更又は解散の決議(法令に基づく解散を含む)をしたとき
⑦ 乙の信用及び資力が悪化したと認められるとき
⑧ その他、本契約に定める各条項に違反した場合
point 3 期限の利益喪失約款を乗せるメリット
① 債権の回収 ⇒ 期限の利益喪失約款により弁済期が到来することになり残債務の回収が可能となる。
② 相殺適状 ⇒ 期限の利益喪失により反対債権を有している場合は、期限の利益 を放棄して相殺できる。
③ 担保権実行
④ 契約解除条項の実効性
Last Updated on 2024年7月9日 by roudou-okinawa
この記事の執筆者 弁護士法人ニライ総合法律事務所は、実績豊富な6名の弁護士で構成されています。このうち3名は東京で弁護士活動してきた経験を持ち、1名は国家公務員として全国で経験を積んできました。 当事務所の弁護士は、いずれも「依頼者の最大の利益を追求する」をモットーに行動いたします。 |